「黒ゴマや黒豆、ひじき、昆布などの黒い食べ物は髪に良い」という話を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。古くから言い伝えのように語られることもありますが、この説には何か根拠があるのでしょうか。東洋医学(漢方)の考え方と、栄養学的な視点から探ってみましょう。東洋医学の考え方では、体の器官と色を関連付ける「五行色体表」というものがあります。その中で、「黒」は生命エネルギーや老化を司る「腎(じん)」に対応する色とされています。そして、「腎」は髪の健康と深く関わっていると考えられています。「腎」の機能が低下する「腎虚」の状態になると、白髪や薄毛といった髪のトラブルが現れやすくなるとされているのです。そのため、「黒い食べ物(黒色食品)」は「腎」を補い、その働きを高めることで、髪の健康維持や老化防止に繋がる、という考え方が古くからあります。黒ゴマ、黒豆、黒米、ひじき、昆布、わかめ、プルーン、ブルーベリーなどが、代表的な黒色食品として挙げられます。栄養学的な観点から見るとどうでしょうか。これらの黒い食べ物には、実際に髪に良いとされる栄養素が豊富に含まれていることが多いのです。例えば、「黒ゴマ」には、タンパク質、ミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛など)、ビタミンE、そして抗酸化作用のあるセサミンなどが含まれています。「黒豆」は良質なタンパク質と、女性ホルモン様の働きが期待される大豆イソフラボン、抗酸化作用のあるアントシアニンが豊富です。「ひじき」や「昆布」、「わかめ」といった海藻類には、髪の成長に必要なミネラル(ヨウ素、鉄、亜鉛、カルシウムなど)や食物繊維が多く含まれています。これらの栄養素は、髪の毛そのものの材料になったり、頭皮の血行を促進したり、頭皮環境を整えたりするのに役立ちます。つまり、「黒い食べ物が髪に良い」という言い伝えは、東洋医学的な考え方だけでなく、栄養学的な観点からも、ある程度の根拠があると言えるかもしれません。もちろん、黒い食べ物だけを食べていれば髪の問題が全て解決するわけではありません。あくまでバランスの取れた食事の一部として、これらの食材を意識的に取り入れることが、健やかな髪を育むための有効なアプローチの一つとなるでしょう。