更年期に入り、セルフケアだけでは薄毛の改善が見られない、あるいは進行が気になる場合、専門的な「医学的治療」を検討することも有効な選択肢となります。ただし、治療にはメリットだけでなく、デメリットや注意点もあるため、医師とよく相談し、納得した上で選択することが重要です。まず、女性の薄毛治療で一般的に用いられるのが「ミノキシジル外用薬」です。ミノキシジルは、毛母細胞を活性化させ、発毛を促す効果が認められている成分です。頭皮に直接塗布するタイプで、女性向けには低濃度の製品(1%など)が市販されています。医師の処方であれば、より高濃度のものを使用できる場合もあります。効果が現れるまでには数ヶ月以上の継続使用が必要であり、副作用として頭皮のかゆみやかぶれ、初期脱毛などが起こる可能性があります。次に、更年期の薄毛の原因としてホルモンバランスの乱れが大きい場合には、「ホルモン補充療法(HRT)」が間接的に薄毛改善に繋がる可能性も考えられます。HRTは、減少したエストロゲンを補充することで、更年期症状全般を緩和する治療法であり、髪のハリやコシの改善が副次的に見られることがあります。ただし、HRTは乳がんや血栓症などのリスクも伴うため、薄毛治療を主目的として行われることは少なく、婦人科医との慎重な相談が必要です。また、男性ホルモンの影響が強いFAGA(女性男性型脱毛症)の場合には、「スピロノラクトン」という薬剤が処方されることもあります。これは本来利尿薬ですが、抗アンドロゲン作用(男性ホルモン抑制作用)があり、抜け毛を減らす効果が期待されます。ただし、これも保険適用外の自由診療であり、高カリウム血症や月経不順などの副作用に注意が必要です。その他、頭皮に直接成長因子などを注入する「メソセラピー」や、自身の血液を用いる「PRP療法」といった再生医療系の治療法も、一部のクリニックで行われています。これらも自由診療であり、効果や安全性についてはまだ確立されていない部分もあります。どの治療法を選択するにしても、まずは皮膚科や女性薄毛専門クリニックを受診し、正確な診断を受けることが第一歩です。そして、医師から各治療法の効果、リスク、費用、期間などについて十分な説明を受け、自分の状態や希望、ライフスタイルに合った治療法を慎重に選択することが大切です。