40代後半に差し掛かり、自分でも気づかないうちに進行していたのだろう。ある日、会社の健康診断で撮った証明写真を見て愕然とした。頭のてっぺん、つむじのあたりが、思っていた以上に白く写っている。いわゆる「O字ハゲ」というやつだ。それまであまり気にしていなかっただけに、ショックは大きかった。それからは、エレベーターの鏡や電車の窓に映る自分の頭頂部が気になって仕方がない。若い部下たちのフサフサした髪を見ると、羨ましさと同時に劣等感のようなものを感じてしまう。このままではいけない、何か対策をしなければ。そう思い、まずはインターネットで評判の育毛剤を試してみた。毎日欠かさず塗布したが、数ヶ月経っても効果は感じられない。次に試したのは高価な育毛シャンプー。これも気休めにしかならなかった。「もう年齢的にも仕方ないのか…」と諦めかけていた時、妻が「一度、専門のクリニックに相談してみたら?悩んでるだけじゃ変わらないでしょ」と背中を押してくれた。正直、恥ずかしさもあったが、藁にもすがる思いでAGA専門クリニックのカウンセリングを受けた。マイクロスコープで頭皮の状態を見ると、やはり頭頂部の髪は細く、密度も低下していた。医師の診断はAGA。治療法として、内服薬(デュタステリド)と外用薬(ミノキシジル)の併用を勧められた。副作用の説明も受け、少し不安もあったが、ここで何もしなければ後悔すると思い、治療を決意した。治療を開始して最初の数ヶ月は、これといった変化はなかった。むしろ、初期脱毛なのか、抜け毛が増えた時期もあった。「本当に大丈夫だろうか」と何度も不安になったが、医師を信じて、とにかく毎日、薬を飲み、塗り薬を続けた。変化が見え始めたのは、半年を過ぎた頃だった。まず、抜け毛が明らかに減った。そして、洗髪後に髪を乾かすと、以前より頭頂部にボリュームを感じるようになったのだ。さらに1年が経過する頃には、気にしていた地肌の透け感がかなり改善されていた。鏡で頭頂部を見るのが、以前ほど苦痛ではなくなっていた。完全に元通りとは言えないまでも、確実に髪は太く、密度も増している。何より、治療を始めたことで、悩み続けることから解放され、精神的に楽になったことが大きい。諦めずに一歩を踏み出して本当に良かった。50歳を過ぎた今も治療は続けているが、髪の状態には満足している。