AGA(男性型脱毛症)治療の効果は、治療を開始した時点での薄毛の「進行度」によって大きく左右されます。どの段階で治療を始めれば、どの程度の効果が期待できるのか。進行度別の期待値を知っておくことは、現実的な目標設定と治療へのモチベーション維持に役立ちます。AGAの進行度は、一般的に「ハミルトン・ノーウッド分類」という指標で評価されます。Ⅰ型(正常)からⅦ型(最も進行した状態)まであり、数字が大きいほど進行していることを示します。「初期段階(Ⅱ型~Ⅲ型程度)」:生え際が少し後退し始めた(M字)、あるいは頭頂部がわずかに薄くなってきた、という段階です。この時期に治療を開始するのが最も効果的とされています。毛包の機能がまだ十分に保たれている可能性が高いため、薬物療法(フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなど)によって、進行を抑制するだけでなく、かなりの改善(髪が太くなる、密度が増す)が期待できます。治療によって、薄毛が気にならないレベルまで回復する可能性も十分にあります。「中期段階(Ⅳ型~Ⅴ型程度)」:生え際の後退がさらに進んだり、頭頂部の薄毛がはっきりと認識できるようになったり、あるいは前頭部と頭頂部の薄毛が繋がり始める段階です。この段階でも、薬物療法による進行抑制効果は期待できます。また、毛根の機能が残っていれば、ある程度の改善(現状維持+α)も見込めますが、初期段階ほどの劇的な回復は難しくなってくる可能性があります。治療目標としては、まず進行を食い止め、現状を維持しつつ、可能な範囲での改善を目指す、という現実的な設定になることが多いでしょう。併用療法などが検討されることもあります。「進行期(Ⅵ型~Ⅶ型程度)」:前頭部から頭頂部にかけて広範囲に薄毛が広がり、側頭部と後頭部の髪だけが残っている状態です。この段階になると、毛包の多くが縮小・退化してしまっている可能性が高く、薬物療法だけで目に見える改善を得るのはかなり困難になります。治療の主な目的は、残っている髪を維持し、これ以上の完全な脱毛を防ぐこと、あるいはわずかな改善を目指すことになります。この段階で見た目の改善を強く望む場合は、薬物療法と併せて「自毛植毛」が有力な選択肢となってきます。