フィナステリドとの違い特徴解説

AGA治療薬としてよく知られるデュタステリドとフィナステリド。どちらも5αリダクターゼ阻害薬であり、DHTの生成を抑えるという基本的な作用は同じですが、その働きには重要な違いがあります。この違いを理解することは、治療法を選択する上で役立ちます。最大の違いは、作用する「5αリダクターゼのタイプ」です。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類が存在します。Ⅱ型は主に前頭部や頭頂部の毛包に多く存在し、AGAの発症に強く関与していると考えられています。Ⅰ型は側頭部や後頭部、皮脂腺などにも存在し、DHTの生成に関わっています。フィナステリドは、主にこの「Ⅱ型」の5αリダクターゼを選択的に阻害します。一方、デュタステリドは、「Ⅰ型とⅡ型の両方」の5αリダクターゼを阻害する「デュアルインヒビター」です。この作用の違いにより、デュタステリドはフィナステリドよりも強力にDHT濃度を低下させる効果が期待されます。臨床試験データなどにおいても、デュタステリドの方がフィナステリドよりも発毛効果や毛髪の太さの改善効果が高い傾向が示唆されています。このため、フィナステリドで十分な効果が得られなかった場合の次の選択肢として、あるいは初めからより積極的な効果を期待する場合に、デュタステリドが選択されることがあります。また、体内での「半減期(薬の成分が半分になるまでの時間)」にも違いがあります。フィナステリドの半減期が約6~8時間であるのに対し、デュタステリドの半減期は約3~5週間と非常に長いのが特徴です。これは、デュタステリドの方が体内に長く留まり、持続的に効果を発揮する可能性があることを意味しますが、一方で副作用が現れた場合に、その影響が長く続く可能性も示唆しています。どちらの薬剤が優れているというわけではなく、それぞれの特徴と患者さんの状態(進行度、体質、副作用への懸念など)を考慮して、医師が最適な薬剤を選択します。