男性型脱毛症（ＡＧＡ）の治療において、最も基本的なアプローチとなるのが、医師の処方が必要な「内服薬」、すなわちフィナステリドやデュタステриドです。では、これらの内服薬と、市販されているような「育毛剤」は、どのように使い分け、あるいは併用することができるのでしょうか。その関係性を理解しておくことは、効果的なＡＧＡ対策を考える上で重要です。まず、それぞれの役割の違いを再確認しましょう。ＡＧＡ内服薬（フィナステリド、デュタステリド）は、ＡＧＡの根本原因である男性ホルモン（ＤＨＴ）の生成を抑制することで、ヘアサイクルの乱れを是正し、抜け毛を防ぎ、ＡＧＡの進行を抑制する効果（守りの治療）があります。一方、多くの市販育毛剤（医薬部外品）は、頭皮の血行促進、保湿、抗炎症などにより、頭皮環境を整え、抜け毛を予防し、今ある髪を健やかに保つこと（育毛・養毛）を目的としています。発毛効果やＡＧＡの原因に直接作用する効果は認められていません。この役割の違いから、ＡＧＡ治療における両者の位置づけが見えてきます。ＡＧＡと診断され、進行を抑制したい、あるいは改善を目指したいという場合、まず検討されるべきは、医学的根拠のある「内服薬」による治療です。これがＡＧＡ治療の根幹となります。では、育毛剤は不要なのでしょうか？必ずしもそうとは言えません。育毛剤は、内服薬治療の「補助」として役立つ可能性があります。例えば、内服薬でＡＧＡの進行を抑えつつ、育毛剤で頭皮環境を整え、血行を促進することで、より健やかな髪が育つための土台作りをサポートする、といった考え方です。特に、頭皮の乾燥やフケ、かゆみといった悩みがある場合には、それらに対応した成分を含む育毛剤を使用することで、頭皮環境が改善され、内服薬の効果も出やすくなるかもしれません。ただし、注意点もあります。育毛剤の中には、アルコール濃度が高いものなど、頭皮に刺激を与える可能性のある製品もあります。内服薬治療中に、自己判断で刺激の強い育毛剤を使用して頭皮トラブルを起こしてしまうと、かえって治療の妨げになることも考えられます。また、育毛剤を併用したからといって、内服薬の効果が飛躍的に高まるという保証はありません。ＡＧＡ治療の基本はあくまで医師の診断に基づく内服薬（やミノキシジル外用薬）であり、育毛剤はそのサポート役という位置づけを忘れないようにしましょう。