フィナステリドによるAGA治療は長期継続が基本ですが、様々な理由で服用を中断せざるを得ない、あるいは中断を考える状況もあるかもしれません。その際に気になるのが、「服用をやめたらどうなるのか」「離脱症状のようなものはあるのか」ということでしょう。まず、フィナステリドの服用を中断した場合に起こることについてです。フィナステリドの効果は、服用している期間に限られます。服用をやめると、抑えられていた5αリダクターゼの働きが元に戻り、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成が再び活発になります。その結果、AGAの進行が再開し、治療によって得られていた効果(抜け毛の抑制、毛髪の太さや密度の改善など)は、徐々に失われていくと考えられます。多くの場合、数ヶ月から1年程度で、治療開始前の状態に戻ってしまう、あるいはさらに進行してしまう可能性があります。つまり、フィナステリドには、服用を中止したからといって、急激に体調が悪くなるような、いわゆる「離脱症状」は基本的にないとされています。薬が体から抜けていくことで、薬の効果がなくなる、というイメージです。ただし、注意点もあります。ごく稀に、フィナステリドの服用中止後にも、性機能に関する副作用(性欲減退、EDなど)や抑うつ気分などが持続する「ポストフィナステリドシンドローム(PFS)」と呼ばれる状態が報告されています。しかし、このPFSについては、まだ原因やメカニズム、薬剤との明確な因果関係など、不明な点が多く、その存在自体についても議論があります。現時点では、非常に稀なケースと考えられています。治療の中断を考えている場合は、自己判断で急にやめてしまうのではなく、必ず事前に医師に相談することが重要です。医師は、中断した場合のリスクや、その後の経過の見通し、あるいは代替の対策などについてアドバイスをしてくれます。もし副作用が原因で中断を考えている場合も、減量や休薬、他の治療法への変更など、対処法を一緒に検討してくれます。フィナステリドをやめたからといって、急な体調悪化を心配しすぎる必要は低いですが、AGAの進行が再開するリスクは高いことを理解し、中断は慎重に判断するようにしましょう。