僕がAGAの遺伝子検査を受けようと思ったきっかけは、父と兄の存在でした。二人とも30代後半から明らかに薄毛が進行し、特に生え際のM字がくっきりと目立っていました。それを見るたびに、「自分もいつかこうなるんだろうか…」という漠然とした不安が常に頭の片隅にあったのです。まだ20代後半の僕自身の髪は、今のところ特に問題があるようには見えません。しかし、将来への不安は消えず、何かできることはないかとインターネットで情報を探していました。そんな時に知ったのが、AGAの遺伝子検査の存在です。「遺伝的なリスクがわかるなら、受けてみたい」。そう思い、自宅でできる検査キットを取り寄せてみることにしました。キットが届き、説明書に従って口の中の粘膜を綿棒で採取し、返送する。とても簡単な手順でした。結果が届くまで数週間、期待と不安が入り混じった気持ちで待ちました。そして届いた結果レポート。そこには、僕のアンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート数とGGCリピート数が記載されており、「AGAの発症リスクはやや高い傾向にあります」という評価が書かれていました。正直、少しショックでした。やはり父や兄と同じ道を辿る可能性が高いのか、と。しかし、同時にどこか腑に落ちた感覚もありました。漠然とした不安が、具体的な「リスク」という形で見えたことで、むしろ冷静になれた気がします。レポートには、リスク評価だけでなく、遺伝的体質に合わせた生活習慣のアドバイスなども書かれていました。結果を受けて、僕が始めたのは、まず生活習慣の見直しです。それまでは不規則だった睡眠時間を改め、食事もバランスを意識するようにしました。そして、頭皮ケアにも以前より気を配るようになりました。検査を受けたからといって、すぐに髪に変化があったわけではありません。でも、「自分はリスクがあるから、人一倍ケアしよう」という意識が芽生えたことは、大きな変化でした。将来、もしAGAの症状が現れたとしても、早期に気づき、適切な行動を取れる自信がついた気がします。遺伝子検査は、未来を確定するものではありません。でも、自分を知り、未来への備えをするための、有効なツールの一つなのだと、僕は感じています。